「タンパク質とからだ」 (平野久)

「タンパク質は、ほとんどが生体機能の制御に重要な役割を果たしている」(本書)。「タンパク質は生体の構造と機能のすべてにかかわっている」(数研出版の高校生物の教科書)。酵素として、輸送タンパク質(チャネル・担体・ポンプ)として、細胞骨格(アクチンフィラメント・微小管・中間径フィラメント)として、抗体として、ホルモンとして。タンパク質は生命活動の担い手である。

平野久著「タンパク質からだ」 

本書は、プロテオミクス(タンパク質生命科学)の第一人者が記した著書である。タンパク質の基本事項から詳細な分析研究を以ってタンパク質の体内における実態に至るまでを解明し、タンパク質研究が病気治療促進に貢献するであろう旨を記した生命科学著書である。

 

【体の構成成分】

①ヒトを含む動物細胞を構成する物質の割合:水70%・タンパク質20%・脂質5%・炭水化物2%・核酸1%・無機塩類1%・その他1%。 *体重の約20%はタンパク質である。

②ヒトを含む動物細胞を構成する水分も含めた生重量の構成元素割合:酸素(O)66%・炭素(C)17.5%・水素(H)10.2%・窒素(N)2.4%・カルシウム(Ca)1.6%・リン(P)0.9%・ナトリウム(Na)+カリウム(K)+塩素(Cl)+イオウ(S)+その他=1.4%。

③ヒトを含む動物細胞を構成する水分を除いた乾重量の構成元素割合:炭素(C)48.8%・酸素(O)23.7%・窒素(N)12.9・水素(H)6.6%・・カルシウム(Ca)3.5%・イオウ(S)1.6%・リン(P)1.6%・ナトリウム(Na)+カリウム(K)+その他=1.3%。

④水および有機物の細胞を構成する構成元素:水(H,O)/炭水化物(C,H,O)/脂質(C,H,O,P)/タンパク質(C,H,O,N)/核酸(C,H,O,N,P)

⑤大気に含まれる主な元素構成比:窒素(N)75.5%・酸素(O)23.1%・アルゴン(Ar)1.28%・二酸化炭素(Co₂)0.046%・ヘリウム(He)0.0000724%・一酸化炭素(CO)0.00001%・水素分子(H)0.00000348%

 

ゆえに、体は物質レヴェルでは水とタンパク質からできている。水分も含めた生重量の元素レヴェルでは酸素と炭素と水素からできている。さらに水分を抜いた乾重量の元素レヴェルでは炭素・酸素・窒素からできている。動物細胞の構成元素と大気の構成元素を比較すると蓋然的には炭素・水素(⇒水として多く含まれる)・酸素・窒素から自然界の元素は構成されている。これらの元素が思考し行動し生命活動の原動力になっている。端的にはC/H/O/N/P/S、タンパク質のみに絞ればC/H/O/Nが生きとし生けるものを生かしているというわけだ。

タンパク質をして、換言すれば炭素・窒素・水素・酸素をして、人は会話し、思索し、理性的または情念的行動をする。たとえば情動は1+1=2ではなく1+1=3ないし4ないし5…となるゲシュタルト学派のいうφ(ファイ)現象のように現象する。情動のいかなる箇所にも炭素や窒素を覗うことはない。しかし喜怒哀楽を操っているのは、端的にはタンパク質、換言すれば炭素・窒素・水素・酸素ということかもしれない。

 

【ゲノム(genome=gene(遺伝子)+ome(総体) *ドイツのヴィンクラーの概念(1920)⇒日本の木原均の概念(1924 コムギの倍数体の染色体研究)⇒木原説の発展(現在)】

構造:細胞の中の核の中に存在。遺伝子=タンパク質の設計図

               ⇒DNA=タンパク質の設計図=遺伝子集

               ⇒染色体=タンパク質の設計図=遺伝子集のケース(入れ物)。

ゲノム:生殖細胞=配偶子(卵や精子)が持つ染色体一組(核相は単相n)で、機能的に調和のとれた生活を営むのに最小限必要な遺伝子(DNA)の総体。ヒトの場合1ゲノム=23本の染色体。ヒトの受精卵の場合2ゲノム=46本の染色体。

ゲノム的側面から見たタンパク質:遺伝子に設計されたタンパク質が集まってDNA(遺伝子集)が形成され、DNAは染色体という入れ物に収納され、ヒトの場合1生殖細胞の核内にDNAが入った箱が23箱存在する。その23箱をゲノムという。

 

【ヒトのタンパク質の数と寿命】

ヒトの場合、タンパク質をコードする遺伝子数は「少なくとも」(⇒選択的プライシングを考慮する)2万55と推定されているそうだ。それはヒトゲノムのサイズ=塩基対数約30億から計算される。タンパク質はわずか数秒で産出されその半減期が1時間にも満たないものから、眼のレンズを担うクリスタリンというタンパク質のように一生更新されないものあり、寿命は長短さまざまであり一定していない。

 

【タンパク質マップと病気治療】

2万種類余のタンパク質が体のどこに、いつどのように発現しているのかを分析する「プロテオーム・マップ」の作成が近年多くの研究者で進められている。以下の抜粋参照。

タンパク質とからだから抜粋

「からだの中の二万種類の基本タンパク質が、健常なときと病気にかかったとき、いつ、どこでどれくらい発現しているかの違いが明らかになれば、病気で発現が変化するタンパク質を捉えることができる。病気で発現が変化するタンパク質は、早期診断、治療の効果判定、予後予測の標識(バイオマーカー)として利用することができるだろう。」とあるように、タンパク質マップは病気治療につながる。