層雲峡・旭川

冬の音更

 

地図画像

 

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「こんな猛吹雪、北海道の人間も車運転しないですよ。」これはフロントの人がこの日の猛吹雪の中を超のろのろ運転でようやくホテルにたどり着いた我々に対しての一言であった。やさしく警告の意が込められていた。三国峠あたりから猛吹雪・ブリザードが容赦なく続いた。フロントガラスから見えるのは行ったり来たりするワイパーと白い色のみ。道幅も木も標識も何も見えない。北海道特有の矢羽根標識なんか探しようが無い。まるでフロントガラスに白い画用紙が張り付いているかのようだ。目の前に急に対向車の灯が見える。対向車が目に入るのは事故でも起こしそうな直前になってからである。時速10kmほど。しかし観光客を乗せた観光バスが普通の速度で追い抜いていった。さすが慣れたプロの技だ。北海道の人に聞いたところ余程のことが無い限りバスやトラックは運行するそうである。仕事なのだからと納得はするものの極寒の猛吹雪やアイスバーンを思えば「すごいな~」と敬服してしまう。

層雲峡氷瀑祭り 層雲峡氷瀑祭り 層雲峡観光ホテル

命からがらたどり着いた層雲峡のホテル近くは「層雲峡氷瀑まつり」進行中。赤や青のカラフルな電飾が埋められた大きな氷が林立して沢山の人の声が林立した氷の壁を反射する。風雪の中に人の声が波打って聞こえてくる。北海道の人は冬を楽しむといわれるがまさしくこれもそのひとつである。

  *層雲峡氷瀑まつり

   1976年に始まった層雲峡の冬のイベント。上川町の石狩川が氷結するのを利用した氷の祭典。
   
静内のシャクシャイン像を作成した彫刻家竹中敏洋氏の考案。
   
ライトアップされ美しい。極寒の中のライトアップは明るく楽しい気分を呼ぶ。暗くさびしげな極寒
   
の夜を吹き飛ばし楽しもうという気分になる。

大きく変化する北海道のダイナミックな自然を体感する。自然の中に溶け込む。人間も自然の一部である。一生行なう細胞分裂の回数は人それぞれ決まっているそうである。そんなことを考えるとやはり人間も動物であり自然であるのだと結論することになる。少しでも長く人生を楽しみたいという発想は従って哀愁を帯びてくる。それは人生が有限であることの逆説的証明である。人生が有限であると誰もが認識している証拠である。宗教は哀愁を帯びた現実からの逃避かもしれない。しかしそれは二重に哀愁を帯びた現実を作り出している。大切なのは「この時」を感じて、対峙している諸事に「時間を忘れて」夢中になって集中することである。

旭川駅 旭川駅

旭川は「川と橋の町」といわれる。石狩川・美瑛川・忠別川が市内を貫流する。川と緑の自然と清澄な空気。人口約35万人の北海道第2の都市である。内陸性の気候がゆえに真冬は氷点下20度にも至る道東の都である。井上靖はふるさと旭川の美しさに対して「私は誰よりも恵まれた出生を持っていると思った」との思いを残している。函館で死にたいとの思いを残した啄木を思い出す。自然の美しさが冷涼な空気や清涼な川の音とともに感覚的に残る素晴らしい北国の都市である。

雪の美術館(旭川) 雪の美術館(旭川) 

旭川市街の西部に北海道伝統工芸美術村がある。この芸術村内には「国際染物美術館」「優佳良(ゆうから)織美術館」「雪の美術館」がある。いずれも旭川ならではの立地である。特に雪の美術館は低湿な北海道の雪の結晶を科学的見地から見学させてくれる。当館は雪の研究に生涯を捧げた北海道大学低温科学研究所の小林禎作教授(1925~1987)の研究資料のすべてが保管されている。江戸時代の鈴木牧之による「北越雪譜」や戦前から戦後に活躍した元北大教授中谷宇吉郎博士(1900~1962)による「雪」(1938 岩波新書赤版)の資料ともども雪に関する日本唯一の科学資料館である。

雪の美術館(旭川)  優佳良織美術館(旭川) 

男山酒造・大雪の蔵・高砂酒造など日本酒や濃厚な豚骨醤油ラーメンも極寒の北国の都市旭川の味である。濃厚な旭川ラーメンの暖かさは風雪舞う街に程よくマッチする。

食は気候風土の結論である。

旭川ラーメン店[一蔵]

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