神威岬

北海道の日本海南西沿岸は複雑な海岸を形成し絶壁や奇岩が点在する。日本地図を見てみると確かに国土地理院が定めた崖や奇岩記号が連続する。余市あたりから積丹半島さらに岩内・蘭越に向かう海岸沿いの国道229号線からの風景は起伏に富んだダイナミックな海岸風景を呈する。この229号線を北上し小樽を通過し、増毛⇒留萌⇒苫前⇒天塩…に続く国道231・232号線を経て稚内に至る北日本海沿岸はこの沿岸をドライブすること自体が旅の目的になる。

神威岬     神威岬

小樽⇒余市を経て日本海沿岸を南下していくと日本海に突き出た積丹半島に至る。積丹半島の先端には、北側に積丹岬、南側に神威岬がカタツムリの角のように突き出ている。海の彼方前方に南側の角たる神威岬が見えてくる。半島の先に来ていることが実感できる。

神威岬の案内板

地図で見るほど近くではない。すでに遠望できる神威岬まで道路標識で25kmとある。北海道は広い。幕末に「大日本沿海與地全図」(1818)を作成した伊能忠敬はここを歩測した。驚嘆すべき事績である。日本人の丁寧さや緻密さに加えて完遂する精神的エネルギーこそ飽きっぽい現代人の学ぶべきところだ。

 チャレンカの道の入口 神威岬の入口

納沙布岬も襟裳岬も宗谷岬も、そして神威岬も先端を遠望してからひとしきりある。これぞ岬めぐりの楽しさだ。神威岬は岬の付け根の駐車場から岬の先端まで資料によれば約770m(ゆっくり歩いて約40分)を遊歩道を景色をみながら歩く。半島の尾根に設置された細い遊歩道である。岬の先端に至るその尾根道は両側が急傾斜となっている崖上を貫く。金網のつり橋上の部分も幾箇所かある。足元に注意。岬そのものを体感する。「水無しの立岩」「神威岩」など観光名所を沖に望める。雷電や岩内方面の見ごたえのある海岸線が夕映えにかすむ。

神威岬から岩内・蘭越方面を望む 

資料によればこの遊歩道は「チャレンカの道」と言われるそうだ。義経を慕って追ってきたアイヌの娘チャレンカがその望みが達せられず海に身を投じ、彼女は神威岩になったという伝説である。そしてその嫉妬心がそこを通過する女性を乗せた船を転覆させるからこの岬は以前は女人禁制であったようだ。「なじかは知らねど・・・」の歌詞で有名なライン川のローレライ(ライン川流域に突き出た高さ130mの岩山)の物語に似ている。神威岬の女人禁制の伝説は、その実はニシン漁の権益を邪魔させないことを目論んだ江戸時代の松前藩の方便が真相だそうだ。

 積丹ブルー

***ローレライの歌詞 

 詩:ハイネ /訳詩(明治42年):近藤朔風 /作曲:ジルヒャー***

なじかは知らねど 心わびて 

昔の伝えは そぞろ身にしむ

さびしく暮れゆく ラインの流れ

入り日に山々 赤くはゆる

 

うるわし乙女の いわおに立ちて

黄金(こがね)の櫛とり 髪の乱れを

梳きつつくちずさぶ 歌の声の

くすしき魔力(ちから)に 魂(たま)も迷う

 

漕ぎ行く舟びと 歌に憧れ

岩根も見やらず 仰げばやがて

浪間に沈む 人も舟も

くすしき魔歌(まがうた) 歌うローレライ

 

神威岬の道路標識(国道229号線)  

地図画像

 

北日本海の打ち寄せる荒波。起伏に富んだ岩礁の海岸。夕陽と夕風。神威岬の絶壁。そして静かな時間。寂寥の感が漂う。

こちらもどうぞ