見果てぬ夢「蝦夷共和国」~五稜郭~

夕陽に染まる五稜郭タワー

北海道函館が誇る観光スポットは函館山からの夜景ばかりではない。昔日の函館戦争の要塞、榎本武揚や土方歳三が夢見し蝦夷共和国の夢の残像遺産五稜郭はその双璧的存在である。五稜郭タワーは夢に果てたロマンの面影を一望する追憶のスポットだ。

生きている限りに執着し、その採算を度外視し、見果てぬかもしれない夢を見て、それにもかかわらず再び絶海への航海に向けて帆を揚げる。鮮鋭な気概と行動こそ時間に空間を埋め込む有意味な人生だ。鎖につながれてせいぜい半径5mほどの狭い地面と向き合ってひねもす過ごす時間だけの犬の暮らしではなく、時間に行動を伴った空間をぎっしり詰めた現実を体現する。

五稜郭タワーから函館山を望む

戊辰戦争のなれの果てとなった函館戦争と見果てぬ夢の露と消えた蝦夷共和国の歴史。五稜郭タワーの上層から「夏草や 兵どもの 夢のあと」(芭蕉)を追体験する。タワーからの眼下に官軍と佐幕派旧幕府軍の怒声と悲鳴を伴った戦闘が浮かび上がる。長い江戸時代、冷や飯を食わされてきた西南雄藩を中心とした外様大名らの旧幕府勢力への大逆襲であろうか、歴史的因果関係は世代を超えて継承され、この苦渋を決して忘れはしまいとでも言わんかのように260年の仇を晴らす。そればかりか何倍もの仇討は明治維新という大勝利を証する敵の討ち首を高々と上げて新しい時代=近代に凱旋した。

 五稜郭タワーから五稜郭を望む  五稜郭タワーから函館市街を望む  

しかしながらこの雄藩の勝者は驕り高ぶり外国との戦争を肯定し、国内においては少なくとも1945年敗戦の決着までこの雄藩勢力の政治は存続した。明治・大正・昭和の政治の実権は濃度こそ異なるものの彼ら雄藩出身者が継承したからである。

五稜郭タワー内の土方歳三の像  五稜郭タワー内の土方歳三の案内板  

歴史はその時点を過ぎてから判明すものでありその渦中にいるときは往々にして、様々な識者の警鐘にもかかわらず、気付かないものである。函館はその渦中をはるかに過ぎてその歴史を教えてくれる歴史遺産である。函館は日本史のダイナミックな転換点の実証見聞地点である。五稜郭タワーはそのシンボリックな空間である。

五稜郭タワーから五稜郭を望む

北の大地はこれから極寒の季節を迎える。昔日のロマンも雪原の中に温度を保持し連綿と続く歴史的因果関係の続きを編み続けることであろう。

函館奉行所珈琲

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