小樽金融資料館(日本銀行旧小樽支店)

『日本銀行旧小樽支店の建物は、赤レンガで有名な東京駅の設計者・辰野金吾や長野宇平治らが設計し、1912年(明治45年)7月に完成しました。外見はルネッサンス様式を取り入れ、屋根には5つのドームを配置。外壁のレンガの表面にモルタルを塗り、石造り風に仕上げているのが特徴です。』『アイヌの守神シマフクロウをモチーフにしたとされ、内壁に12体、外壁に18体あります。職員がいない夜、フクロウが支店を見張っていました。』(以上いずれも小樽金融資料館の案内パンフレット) 

旧日本銀行小樽支店 日本銀行旧小樽支店入口     

 日本銀行旧小樽支店金融資料館は小樽に数ある歴史建造物の中で特筆すべき歴史博物館である。上述の案内記述にあるように言わずと知れた「東京駅(1914年竣工)」「日本銀行本店(1896年竣工)」などの設計者である辰野金吾(1854~1919 佐賀県唐津市出身 工部大学校(現在の東大工学部)卒)の代表的建築物である。赤レンガと白い花こう岩、ドームを備えたルネサンス様式、というのが辰野建造物の特徴であるといわれる。調べてみると、「東京駅」「旧日本銀行京都支店」「旧第一銀行神戸支店」(いずれも辰野金吾の設計作品)など本当に赤レンガとドームが印象的である。ただしこの日本銀行旧小樽支店や日本銀行本店は赤レンガではない。

旧日本銀行小樽支店  旧日本銀行小樽支店

たとえばシェーンブルン宮殿(ウィーン)やロンドン塔など西洋建造物に比較すれば、明治時代から現在までの日本の歴史的建造物は歴史的には浅いと感ぜざるを得ないが、そして遅れた近代国家日本の欧米模倣・欧米礼賛の志向の歴史を受容せざるを得ないが、しかしそれにもかかわらず、実際に訪れて見学すると近代黎明期、日本の生真面目で几帳面で牽牛な精神が伝わってくる。生真面目な精神とは、日本の「遅れ」を正面から頭(こうべ)を垂れて受け止めているという精神である。欧米近代への憧憬と日本の後進性への焦燥と欧米コンプレックスを包み隠さず受容するという精神である。敗北や無能さを実直に受け止めそこから出発してきたことが近代日本の原点ではないかと感じる。見習うべき点ではないかと感じる。

旧日本銀行小樽支店 →→ 旧日本銀行小樽支店

しかし、日本の歴史は実際にはその「純粋な向上精神」の中に「いつか見返してやる」という屈折した精神を内在していた。つまり、日清・日露戦争の勝利は劣等感から優越感への転換という屈折したエネルギーを日本人の心に供給した。「日本は日露戦争の勝利で一級国になった」という文脈こそ逆説的に屈折した向上精神の内在を証明している。敗北者から勝利者へ、下層階級から上層階級へ、貧困から裕福へ… 競争や相対性の蔓延する社会の空気がいつも前提に底流する。相対性に束縛されて自由への解放が閉ざされている。いつも誰かを意識して勝ち負けを基準にする。近現代の競争社会がいっそう相対主義的価値を高めていった。個人主義ではいられなくしていった。

そもそも内在されていると考えられる日本人の集団主義志向~「赤信号みんなで渡れば怖くない」「他の人もそういっている」「みんながやっているのに…」という志向~は相対主義的価値に合致しているのかもしれない。

日本銀行旧小樽支店の案内パンフ 

有限な人生を思うとそれは、中身の詰まった自分の人生に価値を置く限り、相対的な生き方はエネルギーの損失である。社会や世界を学び模倣し受容する実直な向上精神を以って外在を内在化し自らを充実させる。他者との競争のためではなく、他者からの評価を得るためではなく、有限な人生を後悔無きよう実感するためである。

地図画像

日本銀行旧小樽支店は小樽駅から徒歩約10分、坂の町小樽の坂道沿いに堂々たる存在感を際立たせている。入場無料、近代日本の経済史を貴重な写真や資料を以って迎える。歴史的資料を熟読して自分なりに近代史を再考する。新貨条例(1871)・国立銀行条例(1872・1876・1883)・松方財政…第一世界大戦期の大戦景気、1920~30年代における「大正期の戦後恐慌・震災恐慌、昭和初期の金融恐慌・昭和恐慌といった恐慌に次ぐ恐慌」、絶望的なアジア太平洋戦争期の日本社会と経済、戦後の高度成長…人口に膾炙している近代日本経済史、しかし、その解釈や評価は一定ではないし、「外在の内在化」によって得た自らの目で判断し評価すべきだ。

歴史感情や懐古の念というものは、時として戦争=人殺しをも「古き良き時代」であったとしばしば美化される。過去の苦しい時代を賞賛する感情と類似している。しかし、若い兵士が熱帯のジャングルのなか蛆虫だらけの状態で野垂れ死にさらされている映像は、わずか1年前は軍艦に凛として整列していた純白の制服に身を包んだ海兵の成れの果てである。

日本銀行旧小樽支店オリジナルカップ →→ 日本銀行旧小樽支店オリジナルカップ

(日本銀行旧小樽支店オリジナルカップ)   (日本銀行旧小樽支店オリジナルカップ)

カップ内が冷水の場合           カップ内が温水の場合

金融資料館の道路案内

北の商都小樽は町中に歴史建造物が立ち並ぶ。小樽は町そのものが歴史博物館である。